私の住む地域の水道水は薬剤をふんだんに使った急速ろ過の水だった! 願わくば生き物による緩速ろ過でできたおいしくて安全な水を飲みたい。 では緩速ろ過のしくみはいったいどうなっているのだろう。どんな生き物たちが活躍してるのだろうか。
[ad#co-1]生き物を使って水をきれいにする緩速ろ過とは
日本には5521の浄水場があり(平成24年現在)、ほとんどが地下水を汲み上げて塩素を入れるだけの方式です。
次に多いのが薬剤を使って処理する急速ろ過で1783か所。
緩速ろ過方式は染屋浄水場を入れて548か所もあります。
意外と多いんだなと思いました。
そのわりにほとんど知られてませんね。
さて、トップ画像は染屋浄水場を上から見たところです。
大正12年に建てられました。
源水は昔は千曲川の伏流水を利用していましたが、今は千曲川と神川の表流水です。
このため雨がたくさん降ったときは濁ることが多いです。
濁りが大きいと砂ろ過が詰まりやすいので、濁度が12度を越えたときだけ凝集剤を使った急速ろ過を併用しています。
画像の右のほうにPACと書いてあるところが凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)を入れる沈殿池です。
ここである程度のゴミを落とします。
いよいよ沈殿池から出てきた水が緩速ろ過池に入っていきますよ~。
ろ過池はひとつの面積が780㎡で13個あります。
上田市の人口の半分以上の86400人分を賄っています。
浄化の核心部といえるろ過池は砂と礫(れき)でできた層であり、ゆっくりとした速度で水を移動させます。
愛しく美しい生き物たち
以下の写真は緩速ろ過の断面の模型です。↓
砂の層の高さは平均90cmで水の深さも同じく90cmくらいです。
実は砂の上部わずか5cmの層に無数のプランクトンが住み着いており、神秘的かつ感動的な命のリレーが行われているのです。
中でも浄化槽にとって強い味方はメロシラ・バリアンスという糸状の珪藻(ケイソウ=植物)です。
ただの藻ではなく珪(=ガラスの一成分であるケイ素のこと)を持ってる藻。
大きさはわずか0.02ミリほど。
透明感があってべっこう飴のようですね。
メロシラは砂の上を覆って砂の目詰まりを防ぎます。
植物性プランクトンとともに光合成をおこなって水中に酸素を出します。
この酸素によって砂の表面には多くの生き物が繁殖し、バイオマス(生物資源)を作ります。
源水の中にチッソやリンなどの栄養があればあるほどメロシラは栄養分を取り込み、増殖して酸素を供給します。
光合成で酸素を生み出す⇒れっきとした植物ってことですね。
生物浄化はナチュラルフィルター
小さな生き物がより小さな生き物を食べます。
なんとコレラ菌やO-157などの有害菌なども全部微生物群が捕まえて食べてしまいます。
す、すごすぎる……
小さな生き物のフンは砂の層を通ってろ過槽の底に沈みます。
引用: 『上田市の染屋浄水場-緩速ろ過から生物浄化法』 https://www.cwsc.or.jp/files/pdf/material2008new-3.pdf
この微生物や土壌生物が流されない速さのゆっくりしたスピードでこの水を通過させるために緩速ろ過と言われたのです。
名前こそ緩速ろ過とはいうものの、この生き物たちが活躍する層を水が通過する時間はほんの一瞬!!
ですので緩速ろ過イコール瞬間浄化法とも言えます。
水がきれいになる仕組みがわかりましたでしょうか。
薬をたくさん使う急速ろ過はコマーシャルフィルター。
それに対して生き物を使う緩速ろ過はナチュラルフィルターとはよく言ったものです。
なにより
生き物は本当にすばらしい!
植物というものは人間・動物のために存在してるとしか思えません。
こんな自然で安全で低コストのやりかたがもっと広まればいいのにと心から願います。
さて、農業をやってるかたはお気づきだと思うのですが、これって水田の水浄化のしくみにそっくりですよね。
そして意外と生物浄化のしくみはシンブルだと思いませんか?
このたび生物浄化のお話をしてくださった中本信忠先生は、世界中にろ過技術を教えに行かれました。
雨水を飲料水にすることができる装置を現地のかたと一緒に造られました。
出典: 中本信忠
一家に一台こんな雨水タンクを造れば、いざっていうときに役に立つんじゃないかなと思いますがいかがでしょうか。
今日もお読みいただきありがとうございました。
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雨水タンク
昔実家にありましたが、
今では
蛇口をひねるのみで
あまり深く考えていませんでした
情けない。
水について
考えるきっかけに
なりました
ありがとうございます
オレンジみかん 様
さっそくのコメントありがとうございます。
期待したような記事になってましたか? なければごめんなさい。
「情けない」なんて言わないでくださいな。
こんなマニアックなことを深く考えない人のほうが圧倒的に多いですから。
それにしてもご実家に雨水タンクがあったとは凄いお宅ですね。